2009年10月14日水曜日

平成21年10月朝参りお知らせ



ーーー確かに、夢の中で母たちは
「復讐しにきてほしい」とはいいませんでした。それは
「はやくここから救い出して」という切実な叫びでした。
だから私は、行かないではいられなかったのです。
それは母たちと私の破ることのできない約束でした。
ーーー許すことは簡単なことではありません。
でも、憎むのではない方法を私は探したかったのです。
      久郷ポンナレット『虹色の空(2009年出版)』より

 1975年にカンボジアの首都プノンペンを制圧したポルポト派は、政権にあった4年間に150万人以上を殺したと言われます。彼らは知識階級を憎み、官吏、教師、僧侶等を殺害しました。都市住民を農村部に移動させて権利を剥奪し強制労働による農業生産に従事させました。
 久郷ポンナレットさんは1964年、プノンペンで生まれました。父親は国立図書館長、母親は教師という知識階級で、それ故にポルポト政権下で死線をさまよった人です。父は早くに殺され、母親も農村部で殺されました。奇跡的に助かった彼女は、姉を頼って1980年に来日しました。日本人と結婚し、2001年にカンボジアでの体験を記した「色のない空」という本を出版しました。過酷な集団労働、栄養失調で労働に耐えられなくなると姿を消す人達、その人達は農民たちによって殺されたのです。多くはポルポトの共産主義に洗脳された少年たちでした。
 優しいご主人との間に子供も授かり、幸せを得た彼女でしたが、ある晩、恐ろしい夢を見ます。それはカンボジアで殺された家族が救いを求めている夢でした。彼女は、自分が死に直面した地を再び訪れて、そこで命を落とした7000人のみ霊への供養を行いました。供養には、その土地の人を招待し、布施をします。かつて彼女たちを苦しめ、沢山の人を殺した人達です。それでもポンナレットさんは喜捨をし、ともに冥福を祈りました。
 冒頭の言葉は、この時の、ゆれ動く彼女の心を記したものです。仏教徒としての敬虔さに満ちていて、胸を打たれます。

        平成21年10月14日  祥雲寺住職 安藤明之

18日の観音様の朝参りは
午前6時から行います。

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