2017年10月18日水曜日

平成29年10月 観音朝詣りのお知らせ

秋彼岸の本堂前観音様と彼岸花


 アフガニスタンのバーミヤン石窟の大仏像がイスラム教原理主義者によって爆破されたのは16年前のことです。
最近でも、中東の動乱の中で多くの遺跡、文化財が破壊されています。
19世紀から20世紀前半には、ヨーロッパ各国の探検隊が、博物収集の目的で世界中から神像を持ち去り、あるいは壁画を剥ぎ取っていきました。

 自らの信仰、信条のみをよしとして、歴史、文化を異にした人たちの魂が込められた文化財を壊してしまうことが繰り返されているのは悲しいことです。

 東京芸術大学美術館で、「素心伝心 クローン文化財 失われた刻の再生」という展覧会がありました。
バーミヤンなど、おもにシルクロードで失われたり、失われようとしている文化財の再生を試みたものです。
瓦礫等に科学的な分析を行い、スケッチや写真などの記録を基に3Dプリンターなどの新技術を駆使して実物に限りなく近いものを造りあげています。

 失われたものではありませんが、法隆寺の釈迦三尊像も複製されています。像が造られた時の工法や、材料の銅の成分まで調べて造像し、さらに、細かいでこぼこや経年による変色まで写し取っていますので、実物と見まごうばかりです。
それだけでなく、昭和24年の火災で損傷した壁画も再生して周りを囲んでいるので、まるで白鳳時代のお堂にお参りしているようです。

 この複製事業には、富山県高岡市と南砺波市の協力がありました。
高岡は梵鐘をはじめとする銅鋳物の生産地であり、南砺波には井波の木彫があります。
高度で伝統的な技法を伝えている人たちが参加し、芸術家、科学者、先端技術者と力を合わせました。
言ってみれば最新技術と伝統技術の融合によって生まれたものです。

 文化財は、それが存在するところに生きた人々の魂の結晶です。
存在することに真の価値がありますし、あるべき所にあることも大切です。
しかし、現実に失われたり、失われようとするものがたくさんある現在、このような試みも大きな意義があると感じました。

 平成29年10月15日
                                     祥雲寺住職 安藤明之

十八日の朝詣りは午前6時から行います。

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