2009年11月14日土曜日
平成21年11月朝参りお知らせ
11月3日、東京上野の森美術館で開催されているチベット展を見てきました。チベット仏教の総本山ポタラ宮のものを中心に、仏像、マンダラ、タンカ(仏画の掛け軸)などが出品されていました。日本の国宝にも劣らない見事なものです。
チベット仏教は、タントリズムといわれるインド思想の影響を受けています。タントリズムには煩悩に満ちた輪廻を脱する手段のひとつとして、性的快楽から生まれる忘我の状態を宗教的な無我の境地に転換しようとする修行法があります。仏教の後期密教はそれを精神的制御のみによる禅定法として採り入れるのですが、仏像や仏画、マンダラに女神と結合する如来の姿が見られます。そのため淫猥な宗教との非難も受けました。
チベットの正当仏教では性的意味を一切否定し、お釈迦様がお説きになられたことの全てを成就した修行者のみがその禅定法の修行を許されました。そのため父母像(ぶもぞう)といわれるこれらの仏像の首から下には布が掛けてあり、ポタラ宮に行っても全体を拝むことはできません。
私はこれまで美術館で仏像展があると可能な限り足を運んできました。矛盾しているのですが、本来礼拝の対象である仏像が人目にさらされていることに、わりきれなさを感じています。しかしまた一方では、仏像の持つ宗教性は、それを見る人の心に単なる美術を超えたものを感得させていく力を持っているので多くの人に見てもらいたいとも思っています。最近、仏像に心を惹かれる若者が多くなり一種のブームとなっているようです。仏像を通して仏教への関心を持った若い女性を称するに「仏女(ぶつじょ)」という言葉も生まれているそうです。これも仏像が人目に触れる機会があればこそです。
今回見たチベットの仏教美術も、そうした宗教的な感動を呼び起こすものでした。性的なものであっても淫猥さなど微塵も感じられない、精神性の極地といってもよい、存在の根源、宇宙の根源についてのインスピレーションを与えてくれるような像や絵でした。
平成21年11月14日
祥雲寺住職 安藤明之
18日の観音様の朝詣りは
午前6時半から行います。
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