庫裏横手の百日紅
NHK朝の連続テレビドラマ「ゲゲゲの女房」は久し振りに面白い。視聴率も上々のようです。
私はドラマの中の受け手の世代になります。紙芝居、貸本漫画、漫画の月刊少年誌から週刊少年誌、5歳のころから高校生まで、すべて同時代のこととして育ちました。「悪魔くん」や「鬼太郎」も面白く読んでいました。大学生になってもドラマの中で「ゼタ」という名で出てくる「ガロ」という漫画雑誌はよく読んでいました。
ドラマの中で水木しげるさんの兵隊時代の話は、父親が同年代の人達と話しているのをそばで聞いていた思い出と重なります。特に印象に残るのは水木さんの次の言葉です。
「自分は生きて帰ったものには同情せんのです。死んでいった人達はかわいそうだ」
真珠湾攻撃から終戦まで、祥雲寺のお檀家で戦死した人達は166人。ニューギニアで、ルソンで、ビルマで、命を散らしていきました。無事に帰ってきた人達も悲惨な戦争を骨の髄まで味わった人達です。父も2年半の中国戦線、さらに千島守備隊から2年間のシベリヤ抑留に遭いました。その人たちが戦中のことを話していて最後によく言っていた言葉が「何だかんだ言ったって俺たちは幸せだ。死んでいったやつらは本当にかわいそうだ」でした。
水木さんの、生きて帰ってきたものには同情しないという言葉は、戦争の悲惨を本当に味わった人にして言えることです。死者への悼みであり、自己を含めて生きて帰ってきたものへの励ましであり、平和のありがたさのうったえでもあります。過酷な時代を生きた大正年代の多くが鬼籍に入ろうとしている今日、平和な時代に生きることの出来た私のような戦後世代がよくよくかみしめなければならない時代のメッセージだと思いました。
平成22年9月15日
祥雲寺住職 安藤明之
十八日の観音様の朝詣りは
午前六時から行います。
0 件のコメント:
コメントを投稿